ハチロク復活?Ft-86 Concept

 これまでも噂には上がるものの中々市場に出てこなかったAE86の後継車が遂に発売される事になるらしい。エンジンが富士重工の水平対向エンジンであるという点が若干気にはなるものの、ライトウェイトでFRでブンブン振り回して運転できるってのが想像できて期待できる車ではあるように思う。「ゴルフのスコアで100を切れるくらいの運動能力がある人ならドリフトが決められる、そんなクルマを目指しているんですよ」とは開発者の弁。

 自分が初めて購入した車はKP61のスターレット。それも、某大学の自動車部が所有するボロボロのラリー仕様車。クロスミッションだのロールゲージだの足回りだのわくわくする仕様の車だったけど、なにぶんボロすぎて、結局車検を通す事ができず、友人の部品取り車として引き取られていった。

 その後購入したのがTE71のレビン。これは東京篠崎の解体屋街にあった「中村解体」っていうおっさんの所で見つけた掘り出しものだった。ボディは腐ってるって形容できるほどサビサビだったけど、機関は上等、足回りも上等で、そこらに転がってた臨板をつけて近所を試乗して一発で決めた。値切りに値切って6万円で購入した記憶がある。

 エンジン周りは金の絡みもあったいじれなかったけど、夜な夜な箱根に通いながらちょっとずつ手を入れていき、うまい事ドリフトできた時の感動は今も忘れない。中古で仕入れたLSDを組み、フロントのタワーバーを入れただけで全く運転性能が変わった事を思い出す。

 その後、紆余曲折を経て千葉の知り合いが経営する解体屋にAE86の出物があると聞いて現車を確認。横転した事があるらしく、屋根が若干歪んでいたが、走行性能には気に成る影響はなく、勢いで購入してしまった。元々はショップのワークスカーで鋸山のヒルクライムレースにも出場した事のあるバリバリのヒルクライム仕様車であった。これが自分の始めてのハチロクとの出会いであった。

 エンジンこそ4AGのノーマルであったが、足回りがガッチリ固めてあって、6点式のロールバーの効果もあってか、TE71とはボディ剛性感が格段に高く、ボディ剛性が運転性能に及ぼす影響を身をもって知らされた一台でもあった。ガッチリと4点式のベルトで体をバケットシートに固定すると、面白いように車を振り回して走る事ができた。箱根一帯の国道一号、七曲、長尾峠、乙女道路から日光いろは坂、大垂水峠などアホみたいに走り回った。

 今思い出せば無茶な運転してたなぁとは思うけど、その当時は更に頭のネジが10本くらい吹っ飛んでるような連中が沢山いて、そんな中では非常に常識的な安全に配慮した運転だったとは思う。それでも、箱根の長尾峠なんかは、下りは全コーナーでドリフト。対向車が来ても普通にドリフト。缶ジュース片手に持ちながらドリフト。よくもまぁ事故らなかったもんだ。

 それくらい、ハチロクってのは振り回して運転する事が楽しくなる車だった。もちろん、フルノーマルでは、こうは行かないのだろうけど、LSDを組んで、ロールに耐えうるコイルとショック、ボディのよれを抑える最低限フロントのタワーバー、リアに入れればスライド時のジャダーも抑えられる。大層な事はしなくても、ちょっと手を加えれば自分の手足のように扱う事ができる車。そう、それがハチロクの魅力だったと思う。

 決して車に乗せられるわけではなく、あくまで運転者の意思で操る満足感。戦国時代の武将達がこぞって乗馬の腕を競い合ったのと同じように、ハチロクという騎馬を操る。俺はかつてそんな感覚でハチロクに乗っていたと記憶する。

 果たして現在開発されているFT-86なる車両はどうなるのだろうか?確かに「運転する喜び」を再認識できる車にはなるであろう。峠道を疾走するのが楽しい車であるには違いない。しかし、自分が峠に通っていた頃と現在は隔世の感がある。それは、当時の走屋達のバイブル的存在であったCarBoyなどの自動車雑誌の紙面構成を見ても明らかであろう。峠はドリフト走行を抑制する為に凹凸の舗装を施され、ギャラリーコーナーの多くは閉鎖され、かつてのように自らのリスク・自らの責任において走りを堪能できる場所は少なくなってきている。

 そもそも峠を攻める、ドリフトするなんて行為は、現在の世界的なエコロジー志向とは真っ向から対立する趣向である。クルクルと同じ場所を往復する為にガソリンをばら撒き、タイヤを無駄に、きわめて無駄にすり減らす。

 安全性や快適さを全て蔑ろにしてきたわけではないが、それらを削って得られるドライバビリティに悦に至るいわば変態的な趣味趣向である。

 当時、週末に環八から第三京浜・横浜新道と抜け、西湘バイパスに入るあたりから、キチガイじみた趣味車達が続々と集まってくる興奮。みな、不気味にスピードは控え、ゴツゴツと車体を上下に揺らしながら箱根を目指す。そして、峠道に入った途端、気が狂ったようなパフォーマンスを繰り返してゆく。タイヤのスキール音、エキゾーストノート、オイルの焼ける匂い・・・

 きっと、そんなノスタルジーはメーカーが作り出した車からは感じられないような気がする。それでも、こんな車を世の中に送り出そうというトヨタの意気込みは評価したい。

 




 

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